タイタニックのクルーたち
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◆ヘンリー・ティングル・ワイルド航海士長◆
(Chief Officer Henry Tingle Wilde)
”I still don't like this ship...”
船長の次に職位の高かったワイルド航海士長は、1872年、イギリスのリバプールの近く、Walton に生まれた。彼の生い立ち、両親のことなどの詳しい記録はあまり残されていない。
1900年より以前に、少し年上のメアリー(Mary Catherine Jones)と結婚。4人の子供に恵まれる。
James Chanbers社にて、Second Mate's Certificate(二等航海士資格)の取得後、 Maranhan Steamship社へ。そしてMaster's Certificate(船長資格)(免許番号No.024371)を取得後、 ホワイト・スター・ライン社へ。
大型客船に次々と乗船し勤務。1905年6月〜10月’Arabic’に乗船、1905月12月〜1906年4月新’Celtic’に乗船、 1906年9月〜1908年4月’Medic’に乗船、1908年6月〜9月’Cymric’に乗船。そしてタイタニックの姉妹船’Olympic’ (オリンピック)にて航海士長を勤める。
1912年4月3日から10日の間、試験航海から帰ったタイタニックがサウサンプトンで出港準備を整えている期間中に、 ワイルドはスミス船長の要請によりオリンピックからタイタニックへ異動させられている。彼はこの異動を 快く思わなかったようだ。彼が妹に宛てた手紙が残されている。(下記) 出航準備に追われている間、船長も含めほとんどの航海士がタイタニックを訪れていた期間、 彼はまったく顔を出さなかった。突然の異動と引き換えに、休暇をとっていた可能性もある。
この異動は、タイタニックの処女航海のみのアレンジであったとも伝えられている。
4月14日は、午後6時までブリッジの当直、氷山衝突時は非番であった。衝突後は、ボートのカバーを外して、 避難の準備を行った。主に左舷側で避難・誘導にあたあったが、同じく左舷を担当したライトラーに比べてワイルドに関する 証言は少ない。
ボートの準備が出来た時ライトラーはボートを出そうとするが、ワイルドは「待て。」と言った。船長に発進の許可を 取りに行き、ボートデッキに戻ったライトラーに、ワイルドは再び言った。「まだだ。」 (非常に不可解な事である。)
ボートの準備を進めるうちに、ピストルによる武装・威嚇の必要を感じたワイルドは、ライトラーにピストルの保管場所を尋ねる。 武器の管理は一等航海士の役目であり、ライトラーは出港直前まで一等航海士であった。ライトラーはワイルド、船長、 マードックと共にマードックの船室へ行った。ここで、それぞれピストルを携えた。
船が左舷に傾いてきた時、乗客に反対側のボートデッキへ移動するように指示した。
船の沈没とともに死亡。
先に亡くなった夫人の隣に墓石がたてられ、彼の遺児達には「タイタニック救済基金」が支給された。
享年39歳。
生年月日:1872年9月21日生まれ。
事故当時:39歳。死亡。
出身:英国 Walton(Liverpool)
給与:25.00.00ポンド/月
資格:英国海軍予備役 大尉
(Lieutenant,Royal Naval Reserve )
履歴:
〜1990年 メアリー(Mary Catherine Jones)と結婚。
Second Mate's Certificate(二等航海士資格)の取得
Master's Certificate(船長資格)(免許番号No.024371)を取得
1905年 ’Arabic’ (W.S.L;〜ボストン)
〜1906年 ’Celtic’ (W.S.L)
〜1908年 ’Medic’ (W.S.L)
1908年 ’Cymric’ (W.S.L)
1911年 ’Olympic’(W.S.L;〜ニューヨーク;航海士長)
1912年 ’Titanic’(W.S.L;航海士長)
4月15日没 享年39歳
[略:W.S.L=ホワイト・スター・ライン社]
1912年4月11日、タイタニックが寄港したクイーンズタウン(アイルランド)にて・・・
「・・・私はいまだにこの船が好きになれない。(I still don't like this ship)・・・
この船に、奇妙な感覚を覚えるのだ・・・」
(妹に宛てた手紙より )
Photo credits
; April Prichard & Aurora Brynn "Titanic Heroes";<参考文献>
Written by Chie OGATA