「タイタニックのクルーたち(chie's Titanic Officers)」豪華客船タイタニック(Titanic)の歴史、史実、乗組員、クルー、航海士(特にマードック航海士)機関士・設計士・通信士を紹介。自殺の謎、映画の中の航海士、コレクションなど。by智恵-ちえ-
 タイタニックのクルーたち
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◆キャメロンが語りつくす「タイタニック」メイキング秘話◆ 

 

タイタニックの劇場公開後に作成されたメイキング番組”キャメロンが語り尽くす『タイタニック』”の紹介コーナーです。

アメリカやオーストラリアで1998年にTVで”TITANIC Breaking New Ground”というタイトルで放映され、その後映画のビデオ発売時にデラックスバージョンとして「コレクション・ボックス」の中に脚本等と一緒に発売されていました(100豪ドル以上だったと記憶しています)。

日本では、ブラウン牧師の写真展などで、展示コーナーで上映されていたようです。

2001年フジテレビでの放映前に、映画の紹介の特別番組として8月24日深夜に放映されました。

キャメロン監督、ジャック役レオナルド・ディカプリオ、ローズ役ケイト・ウィンスレットのほか、実在の3人のタイタニック生存者の貴重なインタービュー映像や当時の写真・証言、映画製作スタッフとして参加したタイタニック歴史学者ドン・リンチとタイタニック・アーティストの第一人者ケン・マーシャル(ビジュアル(視覚)考証担当)らスタッフも番組に登場します。

(註;生存者の登場部分は、製作年から、過去の資料映像と思われます。)

 

りうさんがナレーションおよび各自のセリフを書き起こして寄稿してくださったものに、注釈や、生存者のエピソードなどを加えアップしました。

番組を見逃した方もそうでない方も、どうぞお楽しみください。

 

*番組に登場するタイタニック生存者(エヴァ・ハート/ルース・ベッカー・ブランシェット/マージョリー・ロブ)のエピソードコーナーはココをクリック!

*番組に登場するキャストと実在の人物の比較はココをクリック!(Juntaroさん「タイタニックの世界」へジャンプします)

*番組に登場「未公開シーン」無線室のシーンはココをクリック→Enter→Great Lost Scenes of TITANIC(俳優さんご自身のサイト)

 

 

【映画『タイタニック』の氷山衝突シーンが流れる。】
見張り台「氷山だ!」
機関室「全速後進!!!」

  以後、映画の各シーンの映像を交えながら、ナレーションは進む。

(NA=ナレーション)
 この壮大な物語に全世界が魅了され、魔法にかけられたかのように興奮する。
 1世紀近くも、タイタニック号の悲劇は人々を惹きつけてきた。
 映画『タイタニック』の監督であるジェームズ・キャメロンは、悲劇を単なるフィクションにとどめることはしなかった。
 キャメロンの長い旅を追ってみよう。

(NA)
 タイタニック号生存者の貴重な証言。

  (タイタニック生存者;エヴァ・ハート)
   「あの恐怖は、とても言葉で表現できないわ」

  (キャメロン)
   「恐怖を伝えたかった」

(NA)
 タイタニック沈没の真相とはいかなるものだったのか?

  (エヴァ・ハート タイタニック生存者)
   「船は真っ二つに折れて沈んだわ」
  (タイタニック生存者;ルース・ベッカー・ブランシェード)
   「悪夢の光景よ」

【氷山衝突直後のシーン】
  イズメイ「沈むものか」
  アンドリュース「沈みます」


* 潜水艇探査の映像
(NA)
 タイタニック号が今なお眠る遥か海の底にもご案内しよう。

  (キャメロン)
   「もう一度戻って、今のテイクを撮りなおす」


(NA)
 そして本編からカットされた未公開シーンも、きょうは特別に公開する。

 【救命ボート上のシーン。モーリーブラウン】
  「戻らなきゃ!!!」
  「戻る訳にはいかない」


(NA)
 タイタニック号の甲板に立った乗客のように、そのスケールの大きさを体験していただきたい。


 


(番組タイトル)
TITANIC Breaking New Ground

 

 (エヴァ・ハート タイタニック生存者)
 「タイタニックは沈まない」と言う父に、母は「神への挑戦ね」と答えたわ。

(キャメロン)
 タイタニックが沈んだのは1912年、その物語はどんな脚本より私を魅了した。 事実なのに、まるで小説だ。

(NA)
 1912年、世界最大の豪華客船タイタニック号が建造され、処女航海に旅立った。
 船長はこの航海を最後に、華やかに引退する予定だった。
 乗客には、世界で最も裕福な階級の人々もいれば、新しい人生を求める貧しい移民達もいた。
 タイタニックはフルスピードで北大西洋を渡って行った。
 そこに大きな氷山が現われ・・・船は大きな損傷を負った。

 救命ボートは、全乗客の半数分しかなかった。
 1500人が命を失い、全世界は衝撃を受けた。
 新しい時代を切り開くはずの『希望』が沈んだのだ。

(キャメロン)
 物語だけでなく、海にも興味があった。
 だからタイタニックの話を映画にしようと決めたんだ。

(NA)
 タイタニックの物語は長く語り継がれてきた。
 しかし、真実を語るためにキャメロンは、何が真実であるのかを知らなければ
ならなかった。
 そのため彼は、実物のタイタニックと対面しようと海底に向かう決意をした。
 1995年、キャメロンは、北大西洋で大掛かりな潜水調査を行った。
 それを助けたのはアラトリー・サガレビッチ博士と、ロシアの調査船・ケルデッシュ号。

(アル・ギティングス プロデューサー補)
 ケルディッシュ号は世界最高の深海調査船だ。
 潜水艇も2つ装備している。
 こんな船は他にないよ。

(NA)
 およそ1ヶ月間、タイタニック沈没の現場で調査が続けられた。
 調査船に集まった科学者と映画製作スタッフは、そこで大自然との激しい戦いに挑む事になる。

 それは地球で、最も過酷な状況における撮影だった。
 タイタニック号は水面下4Kmの海底に沈んでいる、その深さでは《1平方インチあたりの水圧》はおよそ《2700キロ》。
 発泡スチロールのコップが、親指の先ほどの小ささに潰れるほどだ。

(キャメロン)
 潜水艇内からの撮影は簡単だが、それではアングルが限定される。
 カメラを外に出して撮りたかった。


(NA)
 しかし、深海の水圧に耐えられるような撮影カメラは存在しない。
 そこでエンジニアのマイク・キャメロンは特製の撮影装置を開発した。
 ところがそのカメラには12分ぶんのフィルムしか収める事ができない。
 海底ではフィルム交換も不可能だ。

 たとえ1秒たりともムダな絵は撮れない。
 潜水撮影チームは、毎回綿密なリハーサルを行った。

(キャメロン)
 まず、沈んだ船とそっくりの模型を作ったんだ。
 そして、煙をたいてリハーサルした。
 操縦士に潜水艇の模型をもたせ、撮影のコースをたどらせた。
 どんな映像が欲しいか理解させる為にね。

  *撮影現場で…  
  「カメラを通して、私たちを見ながら動いてくれ」
  「よし本番だ」 
 
(NA)
 予定通りのショットを撮るために、キャメロンの撮影隊は12回も海底に潜った。
 海底での撮影は、1回につき最低でも16時間かかる。
 海底にたどり着くだけでも2時間を要するのだ。
 潜水艇の中では、待つ以外何もする事が無い。
 船内は非常に狭く、凍てつく海水のため温度も低下する。
 そして海底は・・・漆黒の闇。
 潜水艇のライトだけが、その闇に秘められた謎を照らし出す。

  *潜水艇で…
  「ゆっくり進め…正面に船首があるはずだ…あれだ、タイタニックだ」
  「撮影を開始する」
  「レディー、アクション!!」

(スタッフ)
 3メートル先にあのタイタニックの姿があった。

 キャメロン「もう1度さっきの所に戻って今のテイクを撮りなおす」
 スタッフ「了解」

(スタッフ)
 何度も行ったり来たりしながら、注意深く本編で使う映像を撮っていた。

(キャメロン)
 初めはリハーサル通りに撮る事しか頭に浮かばず、船の存在を無視して下らないものばかり撮っていた。
 タイタニックの声を聞いてなかったんだ。
 2回目の潜水を終えて調査船に戻り、ひとりになると涙が出た。
 沈没の悲劇を実感したからだ。
 それからはリハーサルを忘れ、自分の感じるままに撮った。
 リモコンの潜水艇にカメラを積み、それを遠隔操作して撮影する事で誰も撮った事の無い船内の映像が撮れた。
 
(NA)
 撮影隊は、無人潜水艇がこれまでに潜ったことの無い深さでリモートコントロールによる撮影を行った。
 カメラが捕らえたのは、幽霊のような船の姿だった。
 この光景が人の目に触れるのは初めての事だ。

(キャメロン)
 装飾のついたスイングドアがあった。
 昔の雰囲気のまんまで、往年の優雅さが残されていた。
 クリスタルのシャンデリアには、鍾乳石が結晶化していて、洞窟の中に居るみたいだった。
 結晶が装飾の一部にも見えた。
 
 この船室はJ・P・モーガンの《ミリオネア・スイート》。
 大理石の暖炉を当時の写真と見比べてみると、模様が一致するため同じ物だとわかる。
 胸に迫る光景だった。
 かつての富豪の船室に、今では白いカニがはっている。
 
(NA)
 このときのタイタニックの映像は、映画の枠を超え、歴史を証明する重要な記録となった。

(キャメロン)
 非常に貴重な映像が手に入った。
 船を一切傷つけずに、ありのままの姿を世界中の人々に伝えようと、私もスタッフも気合が入ったよ。

 **ここで、沈んだタイタニックにローズの姿が浮かび、在りし日のタイタニックに戻る映像が入る**
 

キャメロン)
 事実通りに描くことが大事だった。
 それがどんなに残酷でも。

(エヴァ・ハート タイタニック生存者)
 母は言ったわ、「海には氷山があるかもしれない」

(NA)
 事故が起きたのは、人間が機械で自然を支配しはじめた時代。
 人々はいくつかの階級に分けられていた。
 タイタニックは時代の象徴だった。
 それは、楽天主義と傲慢が入り混じった危険な時代・・・
 ジェームズ・キャメロンはこの映画で、単に豪華客船の悲劇を描きたかったのではなかった。
 彼は観るものを過ぎ去った時代にいさない、歴史に新たな息吹を与えようとしたのだ。

 そこで彼は、全く異なった世界に住む2人を登場させる。
 3等客室の貧しい若者ジャック・ドーソンと、1等客室の上流階級の娘ローズ・デウィット・ビュケィター。

(ケイト・ウインスレット)
 ローズは母親に結婚を決められ、人生に対して、ひどく絶望していた。
 自由に生きたいと願っても、当時、それは叶わない夢だった。
 
(レオナルド・ディカプリオ)
 ジャックはローズの境遇を理解し、彼にとっても、彼女は心を許せる存在になった。
 

(キャメロン)
 観客が二人に感情移入できれば、沈没の悲劇をより深く実感できる。
 2人はタイタニックの悲劇に観客の心を導く

(ケン・マーシャル 視覚美術担当。タイタニック・アーティスト)
 事故ばかりが注目され、沈没前の4日間の事はあまり伝わってこなかった。
 
(NA)
 沈没する直前の平和なひとときを観客はジャックとロースに導かれて体験する。
 にぎやかな3等客室、洗練された上流階級のサロン。

(キャメロン)
 上流階級の描写も、この映画には必要不可欠だ。

  *1等ディナーの始まるシーン
   ローズ「ロス伯爵夫人よ」
   「彼はJ・J・アスター、この船一番の富豪だわ」

(NA)
 タイタニック号の乗客リストを彩ったのは・・・

 ホテル経営者の、ジョン・ジェイコブ・アスター。
 スコットランドの、ロス伯爵夫人。
 金鉱成金の、モリー・ブラウン。
 アーチボルト・グレイシー大佐。
 コスモ・ダフ・ゴードン卿と、その婦人ルシールなど・・・
 【以上は、実際の写真と映画中の役者が並んで写ります】

(ドン・リンチ タイタニック号研究家)
 サロンは社交界の名士であふれかえっていた。
 監督は名士たちの写真を調べ、顔の似た役者を配役した。

(NA)
 映画には他にも多くの実在した人物が登場する。

 タイタニック号の設計士、トーマス・アンドリュース。
 ホワイトスターライン船舶会社の社長、ブルース・イズメイ。
 船長、エドワード・J・スミスを始めとする乗組員の数々。
 そして、伝説の楽士たち・・・
 【こちらも実際と役者が並んで写ります】


 ジャック『本物のパーティーに行くかい?』

(NA)
 三等客室の名も無い人々も登場する。
 彼らは、海の彼方に希望を求め、故郷や家族を捨てて遥かなる大地へと旅立った移民達だった。

 富める者と貧しい者。
 社交界の名士と、身分の低い人々。
 タイタニック号は当時の社会の縮図であった。

(キャメロン)
 船を知らなければ悲劇は理解できない。
 沈没の重大さも分からない。
 タイタニックのすごさを直に伝えることが重要だった。

(ルース・ベッカー・ブランシェード タイタニック生存者)
 乗船時に、大きな窓からダイニングをのぞいたわ。
 食器類は全て新品で、とても美しかった。

 *スミス船長とマードックのシーン
 スミス船長『出航だ。外洋に出るぞ』

(キャメロン)
 外洋に出たタイタニックはフルスピードで航行していった。
 何百人もの機関士が炉に石炭を投げ込み、4階建ての建物ほどのシャフトが回転する。
 船員達は万物を支配した気分だったろう。
 
(NA)
 タイタニック号のパワーと、この船に人々が寄せた過剰な迄の期待を描くためには、迫力あふれる映像が必要だった。
 単に当時の船を復元するにとどまらず、その時代の空気を再現しなければならない。
 タイタニック号の研究家の協力を得てキャメロンが作り上げたのは、映画のセットという域を越えた、本物と寸分たがわぬタイタニック号そのものだった。

(ケン・マーシャル 視覚美術担当。タイタニック・アーティスト)
 階間も内部も、細部に至るまで再現された。
 タイタニックそのものだった。

(NA)
 海のそこに眠るタイタニック号のデッキは再び命を得た。
 船内のジムは1912年当時と全く同じであり、1等のスイート客室も過ぎ去った時代の輝きを放っている。
 白黒の写真でのみ知られていた大階段も、現実の色彩を獲得した。

(キャメロン)
 1等サロンの階段からそれを覆う天蓋、デッキの踊場から燭台にいたるまで再現した。
 全てが完璧に作り上げられた。
 想像で作った物は皆無で、何もかも実物に忠実なセットだった。
 
(NA)
 ジャックとローズが目にする事は、ほんの小さな物から重大な瞬間まで、全てが歴史的事実に基づいている。

(キャメロン)
 2人が体験する出来事はすべて実話だ。
 映画の中の事件が実際に起きたんだ。
 その中を2人は逃げまどい、ひとびとと関わってゆく。
 彼らは実際の世界を巡っていくんだ。

(NA)
 キャメロンは非常に細かい部分にまでこだわり、事実に忠実に描いた。

 日曜のミサで歌われた賛美歌の最後の一節が、《海の上で危難に遭うものよ》という皮肉な歌詞だったのも事実であり、氷山に衝突後、船のデッキに飛んだ氷のかけらでサッカーをする人がいたことも証言に残っている。

 当時の機関士は、スチームパイプの上でスープを温める習慣があり、その様子も映画の中で描かれた。
 【急速後退をかけるシーン】

 船が沈没し始めたとき、船内の器物破損を責められた乗客がいたという証言もあった。
 【ジャックとローズが壁を破ってきたシーン】

 【ジャック、1等デッキに忍び込む。子供がこまを回しているシーン】
 ジャックが1等のデッキに忍び込むこのシーンは、本物のタイタニック号が、シェルブール港に立ち寄ったときに撮られた、現存する1枚の写真を元にしている。

 【沈没後半、デッキで神父が祈る場面】
 2等客室の乗客だったバイルス神父は、沈没直前のタイタニック号のデッキに立ち実際に祈りを唱えたという。
 
(キャメロン)
 ジャックとローズの物語以外全て実話だ。
 それが大きなドラマを支えている。

 

(ルース・ベッカー・ブランシェード タイタニック生存者)
 海に落ちた人を救えたのに、ボートが足りなかったのよ。

(NA)
 タイタニック号の構造や、時代背景についての情報は数多く残されている。
 しかし、今なお《謎》とされている部分も少なくない。

(ドン・リンチ タイタニック研究家)
 いまだに解けない謎も多い。
 これだけ人々が関心を抱いているのに、事故当時の状況はハッキリしないんだ。

(キャメロン)
 人々が何を考え、どう行動したのかを調べた。
 卑怯者も英雄も潔く死んだ者もいただろう。

(NA)
 キャメロンにとって最も困難だったのは、謎に包まれた事故をできるだけ事実に近いかたちで再現することだった。

(キャメロン)
 2年かけて記録や証言を調査した。
 辻褄が合わないものもあるが、信頼できる情報も得られた。

(NA)
 しかし、一つの結論を出すのは簡単なことではない。
 生存者の中にはウソの証言をした者もいたのだ。

(キャメロン)
 船長が速度を上げたのは事実だ。

 【イズメイ氏とスミス船長が話しているシーン】
(NA)
 このシーンでは、船舶会社の社長ブルース・イズメイが、スミス船長に船のスピードを上げろと迫る場面が描かれる。
   イズメイ「使ってない炉がある」
   船長「必要ないんです」

(NA)
 氷山のある海域を通ると知りながら、イズメイはスピードを上げるよう強く要求する。
   イズメイ「予定より早くニューヨークに着けば、君の引退もトップニュースだ。」

(NA)
 本当にイズメイは船長にそのような事を言ったのだろうか?
 海事法によれば、誰も船長に命令できないことになっている。
   イズメイ「最終的な決断は君にまかせるが…」

(NA)
 こんな会話があった事実はないと言う者もいるが、事故の後に行われた聴聞会(査問会)において、1等船客のエリザベス・ライオンズ夫人はこう証言した。

 『イズメイ氏はこう言いました。"火曜に着けば大西洋横断の新記録だ。"』
 【映画の中で、ライオンズ夫人は2人の後ろのテーブルにいました】

(NA)
 その件について(査問会で)質問されたイズメイは、一言こう答えた・・・
  「船長に航海の指示をしましたか?」
  「いいえ」

(ドン・リンチ タイタニック研究家)
 イスメイが船長に指示したのは、事実だったと私は思う。

(NA)
 氷山があるという警告は何度も入っていたのにもかかわらず、なぜスミス船長はイズメイの言葉に従ったのか?
 
【ブリッジで警告の通信文を受け取ったシーン】
  スミス船長「心配ない、氷山には慣れている。」

(NA)
 タイタニックに送られた警告が船長に届かなかったという可能性もある。

(ドン・リンチ タイタニック号研究家)
 無線係が警告を報告しなかったんだ。

(NA)
 無線室は乗客の個人的な通信を処理するのに忙しく、警告を届けるのは二の次にしていたのだった。

 ☆☆☆ここで未公開シーン その@☆☆☆

 このシーンは最終的にタイタニック本編からカットされた無線室の場面である。
 ここでは、タイタニック号の無線係が氷山の警告をどのように扱ったかが、事実に基づいて描かれている。

 【タイタニック通信室。フィリプスとブライドの二人の通信士が仕事に忙殺されている。突然割り込んできた大音響の通信に】
  フィリップス「なんだって!(ヘッドフォンをはずしながら)…バカな警告だ。」
  ブライド「黙れと言え。」
  フィリップス「そうだな。」 
 
 【カリフォルニアン号無線室。通信士エバンズとグローヴス三等航海士】
  エバンズ「ふざけた応答だ。警告したのに黙れだと…」

(NA)
 この無礼な返事を受けた相手はこう言った。

  エバンズ「よし分かった、黙ってやるよ」
  スイッチをオフにして通信室をでた二人、船(カリフォルニアン)は氷山の脇を通過してゆく…

(NA)
 警告は無視され、タイタニック号は悲劇へと向かって行く・・・

 後に最も物議をかもしたのは3等船室の乗客の扱われ方だった。

(キャメロン)
 柵が閉められたと、3等船客が証言している。
 私は事実だと思う。

(ドン・リンチ タイタニック号研究家)
 貧しい人々は差別されていた。
 1等船室は柵で区切られていて、2等と3等の客は入れない。
 沈没直前でも柵は開かなかった。

  **生存者の証言**
   3等船客は船底に閉じ込められていた。
   柵を開けようとしても、係員に無理やり押し戻された。
   3等船客、ダニエル・バックリー

(NA)
 長い間、3等船客の証言は無視されてきた。
 それは何故だったのか?

(ドン・リンチ タイタニック号研究家)
 1等船客の方が社会的信用が大きく、事故の証言を求められたのは1等船客や
船員ばかりだった。

(キャメロン)
 閉じ込められた側の人間が、それを認めるはずはない。
 
(NA)
 一体何人が、このように閉じ込められたまま海に沈んだのかは永遠の謎である。
 
(NA)
 救命ボートに乗ろうとする乗客を、船員が銃で撃ったという噂が事故の直後に広がった。
 2等航海士ライトラーは聴聞会でこれを否定した。

(ドン・リンチ  タイタニック号研究家)
 銃を発砲したのは事実だ。
 ライトラーも聴聞会では否定したが、後に発砲したと認めた。

 映画中の発砲シーンは事実だが、人が撃たれたかどうかは定かではない。

(NA)
 タイタニックには乗客が撃たれるシーンがあるが、それが実際に起こった事を裏付ける新たな証拠が発見された。
 映画公開の2日後、ノルウェー語で書かれた一通の手紙が公表されたのだ。
 事故から生還したノルウェー人3等船客の手紙だった。

  **手紙の内容**
   恐ろしい光景だった。
   悲鳴が今も耳に残る。
   船員に撃たれた乗客もいた。
   K・ミットフォード、1912年4月19日

(NA)
 なぜ、これ程多くの人が死んだのか。
 救命ボートの数が充分にあれば、死者はもっと少なくて済んだのでは?

(ドン・リンチ  タイタニック号研究家)
 法が定めた救命艇の数は16隻。
 タイタニックは20隻積んでおり、必要ないとも思われていた。
 誰が予測しただろう。
 今、考えれば不沈の船など無いが、当時の人々はタイタニックに、《ボートは不要》との思いが強かった。

(ルーズ・ベッカー・ブランシェード タイタニック生存者)
 初めのボートは定員以下だった。
 ボート上の女性達は言ったわ「海に落ちなくてよかった」と。


(NA)
 救命ボートに空きがあるのを見たスミス船長は、ボートを呼び戻そうとしたという。
   ☆☆☆ 未公開画面 その2 ☆☆☆

   「6号ボート引き返せ、船長命令だ」

(NA)
 この場面もタイタニック本編で使用されなかった未公開シーンである。
 【スミス船長、大きなメガホンを持ち呼びかける】

   スミス船長「こっちに引き返せ」

 【そして6号ボート】
   モリー「止めて、引き返すのよ」
   操舵手「だめだ、巻きこまれる」

(ドン・リンチ  タイタニック号研究家)
 モリー・ブラウンは戻れと主張した。
 泣き叫ぶ人を救おうとしたんだ。
 しかし、操舵手ヒッチンズは戻らなかった・
 
 【6号ボート】
   モリー「まだ乗れるわ。戻りましょう!!」
   操舵手「ダメだ。自分の命が大切だ」

(NA)
 船長の声に応えて戻ってきたボートは1隻もなかった。

 【スミス船長、メガホンをゆっくり下ろしつぶやく】
   スミス船長「愚か者め…」

(NA)
 もう望みは無いと悟ったスミス船長は、静かにタイタニック号のブリッジから姿を消した。

(キャメロン)
 船長の最期は誰も知らない、映画のように舵を握って死んだのかも。

(NA)
 船長の遺体は発見されなかった。


(ルース・ベッカー・ブランシェード タイタニック生存者)
 照明弾が上がったわ。
 はっきり覚えてるわ。
 沈んでゆく船から、1500人以上の人々が海に飛び込んだのに助けることは出来なかった。

(キャメロン)
 すさまじい光景だった。
 助かった人はごく僅かだった。

(NA)
 事故当時から激しく議論されてきたのは、タイタニック沈没の瞬間がどのようなものだったか?・・・ということである。
 沈没を正確に再現するためには、状況を詳しく知る必要があった。

(エヴァ・ハート タイタニック生還者)
 沈没の瞬間をこの目で見たわ。
 船が2つに折れて沈んだのを覚えている。
 それは確かよ。

(NA)
 チャールズ・ライトラー2等航海士はこれとは全く違う証言を残している。
   「沈没の際、船は折れたのか?」
   「折れてません」
   「デッキも?」
   「無傷でした」

(ルース・ベッカー・ブランシェード タイタニック生存者)
 4本の煙突の真ん中から折れたの。
 船尾が持ち上げられてから、ゆっくりと沈んで行ったわ。

(NA)
 1等客室の乗客グレーシー大佐は、聴聞会で次のように答えている。
   「沈没のとき、船は無傷でした。デッキや船体が折れた事実はありません。」

(キャメロン)
 歴史とは一種の集団幻覚だ。
 生存者の証言が事実となってしまう。

(NA)
 これまで、船員や1等船客の証言が事実だと思われていた。
 過去に製作された映画も、そのような証言を元に作られた。
 【タイタニック(1953年/未公開)船体が斜めに沈む沈没シーン】
 【SOSタイタニック(1958年)船体が斜めに沈む沈没シーン】

(キャメロン)
 過去のタイタニック映画は、夜の海に斜めに沈む船を書いてきた。
 荘厳なものとして、沈没シーンが描かれたんだ。
 実際はジェットコースターみたいな感じだろう。

(NA)
 1985年、それまでの議論に結論が下された。
 事故の起きた海域を調査したロバート・バラード博士が、1912年以来、初めてタイタニック号の姿を映像にとらえたのだ。
 バラード博士の乗る潜水艇から撮影されたこの不気味な映像事故の悲劇が生々しく伝わってくる。
 タイタニック号の船首部分と船尾部分は800mも離れた位置にあり、その間には船の部品が散乱していた。
 それにより、船体が2つに折れて沈没したことが証明された。

(キャメロン)
 海底の状況を撮影し、生存者の証言も聞いた。
 それから出した結論が沈没のシーンだ。

 本編の中にはCGを使って沈没を再現するシーンもある。
 船体が折れたのは、最も大きく傾斜した時だろう。

  【映画の中で、沈没時のCGによる解説のシーン。ボーディン】
   船首が沈み、船尾が上がる。
   だんだん傾斜がおおきくなり、ケツを真上につき立てる。
   2〜3万トンのでかいケツだ。
   船体は重みに耐えられず、やがて…ピシッ!!…真っ二つだ。
   船尾は水平に戻り、沈む船首に引きずられ垂直になってちぎれる。
   船尾はしばらくコルクのように浮き…

(キャメロン)
 エレベーターのように垂直のまま沈む。
 船尾の手すりによじ登り、沈没を体験した生存者もいる。
 
(キャメロン)
 3等船室の男性乗客の生存率は10分の1。
 機関室は全員死亡。
 まさに地獄だった。

(NA)
 タイタニック号の沈没がどれほど恐ろしい出来事だったかを表現するには、復元した船に人を乗せて、80年前に起きた事故をそのまま再現するしかない。

(キャメロン)
 この物語を映画化するなら本物の船を造り、徹底して事実通りに描かなければならなかった。
 従来の映画作りでは意味がない。

(NA)
 こうして映画史上最大のセットが組まれた。
 この上で、かつて無いスケールの人間ドラマが繰り広げられるのだ。

(ジョン・ランドー プロデューサー)
 沈没の瞬間の人物をリアルに演じるには、船の上で実際の沈没を体験しなければならない。

(キャメロン)
 船内が破壊される様子も、映像化したいと思った。
 海水が窓や天蓋を破って押し寄せてくる。
 非常に生々しく、恐ろしい場面だ。

(ディカプリオ)
 船が傾くと、目の前の人が次々落下して行った。
 まるで自分が、本物の沈没船にいるようだった。

(ケイト・ウインスレット)
 (目の両横に手のひらを持ってきて)こうやると、周りが見えず現実のように思えたわ。

(ディカプリオ)
 そのうち頭が混乱したよ。
 あまりにもリアルすぎてね。

(ケイト)
 あんな事が実際に起きたなんて…

(キャメロン)
 リアルな沈没シーンが必要だった。
 恐怖が心理的に伝わるように。
 主役2人に感情移入すれば、観客も同じ恐怖を体験する。

(NA)
 タイタニック号のデッキに残された人々は、船が沈没すると、凍りつく海の中に放り出された。
 ほとんどの人は溺死ではなく凍死だった。

 5等航海士ロウの証言によれば、海面にはあまりに多くの遺体があったため、オールで漕ぐことも出来なかったという。

 乗客のストラウス夫妻も海に飲まれて死んでいった。
 夫を置いてボートに乗るのを拒んだ妻は、夫と運命を共にした。

 ジョン・ジェイコブ・アスターの遺体が発見されたのは、事故から1週間後のことだった。

 社交界の名士グッケンハイム。
 彼は紳士としての威厳を最後まで守り死んでいった。

 トーマス・アンドリュースは、自分の設計した船が沈んで行く事に深いショックをうけながら、海の底に消えた。

 楽士達は、沈没直前まで演奏を続けたが、一人も助かる事は無かった。

 1502人の命が失われた。
 生存者の多くも事故で受けたキズに、その後、一生苦しんだ。

(エヴァ・ハート タイタニック生還者)
 私と母をボートに乗せ、父は他の人の手助けをした。
 自分はボートに乗ろうともせずに…
 父との別れを悟って、私は泣き叫んだわ。

(マージョリー・ロブ タイタニック生還者)
 父はこう言ったわ、「ボートの方があぶない」
 でも船に残った父は死に、私達だけが助かったのよ。

(ルース・ベッカー・ブランシェット タイタニック生存者)
 船はゆっくり沈んで行った。
 月もなく、真っ暗な夜だったわ。
 沈んでゆく船の明かりをボートから見ていたけど、とても美しかったわ。
 その明かりが、海の中に静かに消えていったのよ。
 あの美しさは今でも忘れられない。
 だけど、それは同時にすごく恐ろしい光景だった。


(エヴァ・ハート タイタニック生存者)
 身体が石のようになったわ。
 動けなかった。

(マージョリー・ロブ タイタニック生存者)
 不沈の船が沈むなんて。
 誰もが恐怖におののいたわ。

(ルース・ベッカー・ブランシェード タイタニック生存者)
 私の乗ったボートは満員で、それ以上は乗せられなかった。
 だから海に落ちた人を、一人も救えなかった。

(キャメロン)
 1912年は20世紀の幕開けであり、科学や産業が発達したかなり特殊な時代だった。
 人間は自然を支配し、その気になれば何でもできると思い上がっていた。

(ディカプリオ)
 誰もが傲慢になり、不可能に挑戦し始めた。
 《沈まない船》はその表われさ。

(キャメロン)
 …その結果、人々は科学技術の発展に頼りきっていたために、世界大戦や核兵器などの問題が生まれた。
 タイタニックは後の時代を暗示していたと言えるだろう。

(NA)
 さまざまな意味で、タイタニック号の事故は20世紀への警鐘だった。
 人間はこの世で最も強い存在ではないという、苦い教訓となったのだ。

(キャメロン)
 私達は、自然の一部だ支配など出来ない。
 人間は万物の頂点に立とうとするあまり、無謀な航海を行い、その報いを受けたんだ。

(NA)
 ジェームズ・キャメロンはただ悲劇を語ったのではない。
 過去を現在に甦らせたのだ。

(ドン・リンチ タイタニック号研究家)
 この映画は1912年の客船がどんなものか体験できる。
 まさに、タイムカプセルだよ。

(エヴァ・ハート タイタニック生存者)
 とても美しい船だった。
 それを忘れないで。

 


Ken Marchall ; 1999 Calender

 

 

Specail thanks ; deaft by りう)

 

 

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